【第5回後編】アスエネ代表取締役CEO・西和田浩平

2024.04.24
  • 対談連載『リーダーのアタマのナカ』

脱炭素事業で「やっぱり日本はすごい」と言われる存在に

オーツー・パートナーズの代表取締役社長 松本晋一が日本の製造業をより元気にする手がかりを探し、様々な領域で変革を起こし続ける各界のキーマンにインタビューする対談連載『リーダーのアタマのナカ』。今回ご紹介するのは、アスエネ株式会社Co-Founder & 代表取締役CEOの西和田 浩平氏。CO2排出量見える化・削減・報告を「見える化」するクラウドサービス「アスエネ」を展開し、地球規模の課題解決に挑み続ける西和田氏の熱意は、どう育まれていったのか。後編は、アスエネが目指す未来を深掘りします。

プロフィール 西和田浩平 アスエネ株式会社/Co-Founder & 代表取締役CEO
慶應義塾大学卒業、三井物産にて日本・欧州・中南米の再生可能エネルギーの新規事業投資・M&Aを担当。ブラジル海外赴任中に分散型電源企業出向、ブラジル分散型太陽光小売ベンチャー出資、メキシコ太陽光入札受注、日本太陽光ファンド組成などを経験。2019年にアスエネ株式会社を創業、「次世代によりよい世界を」をミッションに、CO2排出量見える化クラウドサービス「アスエネ」、サプライチェーン調達のESG評価クラウドサービス「アスエネESG」を展開中のClimate Tech領域のスタートアップを経営。2021 Forbes Japan Rising Star Award受賞、2021 Forbes Japan 100に選出。COP27、COP28に参加。2023年にSBI Holdingsと共にカーボンクレジット・排出権取引所「Carbon EX」を立ち上げ、Carbon EX共同代表取締役Co-CEOに就任

脱炭素事業で「やっぱり日本はすごい」と言われる存在に

松本:三井物産に入社し、20代後半でブラジルのスタートアップに出向した西和田さん。そこでの経験や出会いを通して、「起業」という選択肢が生まれていったのですね。

西和田:そうですね。起業することで、よりオーナーシップを持って仕事に取り組めると思いましたし、何よりも日本から世界に進出して、グローバルで成功したいという気持ちが大きかったですね。というのも、アスエネはアメリカとシンガポールに現地法人がありますが、脱炭素の領域で世界で事業展開している企業は日本にほとんどないんですよ。

松本:たしかに、そうですね。

西和田:日本は昔から、世界に誇る技術力でさまざまな製品を生み出してきました。私がアメリカやブラジルにいたときも、現地の人からよく言われました。「トヨタやホンダの車は、すごいな」って。先人たちの努力や成果のおかげですが、そのたびに誇らしい気持ちになりました。だから、再エネや脱炭素の分野でも、「やっぱり日本はすごい」と再びいわれるような地位を確立したいと思っています。

松本:その偉業を達成するために、アスエネはどんな戦略を取っていきますか?

西和田:起業するときに、「どうしたら大企業に勝てるか」ということを、ずっと考えていました。そして、カギとなるのは、「スピード」と「テクノロジー」の2つであるという結論に至ったんです。大企業は、人材や資金は潤沢にありますが、意思決定が遅い。私も三井物産という大きな組織にいましたから、社内稟議が長く、承認までかなりの時間がかかることは、身を持って感じてきました。年に1件、投資を実行できれば上出来なくらい。そこが大企業の弱点の一つです。

松本:なるほど。

西和田:また、意外とテクノロジーにも弱いですね。社員はエンジニアと話をする機会がほとんどなく、特にソフトウェアの知識には疎い。私もそうでした。だから、スタートアップとして頭一つ抜け出し、大企業に負けない地位を築くためには、「スピード」と「テクノロジー」からビジネスを発想しなければならないと考えていました。

松本:その発想は、西和田さんが中学生のときに取った戦略と似ていますね。アメリカの社会で生き残るために、相手が苦手なこと、自分が得意なことを見極めて行動されていました。少年時代の経験が、起業のアイデアにも活かされているんですね。

西和田:そうですね。テクノロジーは私も苦手分野だったので、起業後に徹底的に勉強しました。会社を立ち上げた2019年の12月の時点では、APIも分からないようなレベルでしたけど、専門書を30冊くらい買って読み込み、内容を要約し、エンジニアを質問攻めにしながら、知識を吸収していきました。

松本:かなり努力されましたね。

西和田:これまで、アスエネは過去を含めて4つの事業を立ち上げてきましたが、最初の2つの事業は、完全に私がプロジェクトマネージャーとなり、要件定義や設計も担当しました。今はだいぶ詳しくなったと思います。

目指すは、時価総額1兆円企業

松本:これからアスエネは、何を目指していくのか、今後の展開を教えてください。

西和田:はい。更なる長期プランと戦略も描いていますが、まず目下の目標は、時価総額1兆円以上の企業になることです。

松本:いつまでに、でしょうか?

西和田:2032年です。現実的に達成できると思っています。

松本:あと8年ですか。かなりチャレンジングですね。

西和田:はい。でも、十分実現可能な数字です。例えば、システム開発を手がけるSHIFTという時価総額約5000億円(2023年時点)の企業がありますが、2020年の時点では1000億円でした。わずか3年間で、約7 倍に成長したわけです。彼らがスピーディーに成長できた理由は、M&Aによる拡大戦略を取ったことでした。

松本:たしかに、創業15年以内に時価総額1000億円を達成している企業は日本に十数社ありますが、その戦略はすべてM&Aですね。

西和田:はい。M&Aなら志を同じくする企業と手を組みながら、仲間を増やすことができる。私たちも、M&Aを積極的に進めていきたいと考えています。それに加えて、当社は営業力とサービスにも強みがありますから、(今ある資産を生かした)オーガニック成長でも勝負できます。

松本:たしかに、今後本気でグローバル展開を目指していくのなら、M&Aとオーガニックの両輪で取り組んでいくのがベストかもしれませんね。

西和田:はい。そして、気候変動問題の解決に取り組む「クライメートテック」の分野で、世界No.1の企業になりたいですね。再エネなどハードの環境技術に焦点を当てた「クリーンテック」に関しては、まだまだ海外が強いですが、クライメートテックの分野は、日本と海外で実績の差がほとんどありません。今、海外でいちばん資金を集めているクライメートテック企業も2020年に設立されたばかりで、事業を始めてまだ3年ほどです。既に我々が勝っている点も多いです。

松本:本当に、もう海外を見据えているんですね。

西和田:はい。これらが実現すれば、1兆円企業になることは十分達成できると考えています。そして、企業価値が高まれば、それだけ世の中に良いインパクトを与えることができる。今年1月の能登半島地震では大きな被害が出ましたが、Yahoo!やGMOなど、時価総額1兆円以上の企業はいち早く支援金を用意して、被災地支援に動き出していました。企業価値の高い企業は、日本の社会インフラとしても、なくてはならない存在になっています。私たちも、早くそういう企業になりたい。

一つのことをやり続けていると、
応援してくれる人も増えてくる

松本:西和田さんは、ご自身を一貫性のあるタイプだと思いますか?それとも、状況に応じて考え方を変えていく方だと思いますか?

西和田:私は一貫している方ですね。比較的「これだ」と決めたら、それを長くグリットできる性格です。

松本:なるほど。私も自分の唯一の才能は、「努力できること」だと分析しているんです。自分で決めたことを、5年、10年と粘り強く続けられる。これ、経営者として大切な要素なんですよね。何かを決断する時に、「これが間違っていたらどうしよう…」なんて考えず、ブレずにやり続けられる人。空気を読まないロマンチストというか(笑)。そうやってずっと続けていると、「この人を応援したい」という人が、増えてくるんですよ。

西和田:分かります。私も起業しようと決めたときは、実績も軸になるプロダクトも何もなく、強みといえば、10年以上かけて積み重ねた再エネや脱炭素の知識とノウハウだけでした。だから、投資家のみなさんは、私の「業界知見」と「コミット」だけを見て、投資を決めてくれたんですね。そのときも、「西和田さんに投資したのは、業界の解像度が高くて、そこの課題を解決したいという強い意志があるからだよ」と言われました。「もし西和田さんが、突然“ゲームつくりたい”って言い出してたら投資してないよ」って(笑)。確かに一つのことをやり続けられることは、起業家に欠かせない特性かもしれません。

オーツーとのパートナーシップで、製造業に特化していく

松本:アスエネとオーツー・パートナーズは、製造業の脱炭素推進に向けて、業務提携契約を締結しました。今後、弊社に期待することがあれば教えてください。

西和田:当社が、これから世界で事業を展開していくために、オーツー・パートナーズさんは欠かせない存在です。というのも、日本企業が丸腰で海外へ進出しても、そう簡単に差別化ができて勝てるものではないからです。たぶん、アメリカ人だったら、アメリカ人が経営する企業のサービスを選びますよね。これは当たり前の流れだと思います。

松本:そうですね。

西和田:そこを覆すためには、明確な強みを構築していく必要があります。そのために、当社はより製造業界のお客さまに特化したサービスを展開することを計画しています。すでに、国内のお客さまの半分以上は製造業。シンガポールやアメリカのクライアントもメインは製造業です。グローバル経済で特に重要なポジションを占める製造業の脱炭素に貢献し、よりよいシステムを提供していくことができれば、世界でも勝負できるという仮説を持って、挑戦しています。だからこそ、製造業コンサルの第一人者であるオーツー・パートナーズさんとのパートナーシップは、必要不可欠なものになるでしょう。

松本:ありがとうございます。

西和田:また、製造業のお客さまからコンサルティングの役割を求められるケースも増えてきました。「CO2排出量を削減するために具体的にどんなことをすればいいか教えてほしい」というご要望もいただきます。例えば、新しい設備を導入したり、製造ラインの設定を変えたりなど、技術的な工夫で排出量を削減できるようなアドバイスができれば、提案の幅が広がります。そこは、すでに御社がやられていることなので、力になっていただけたら心強いです。

松本:分かりました。一緒に、世界の製造業の環境戦略に貢献していきましょう。

日本の脱炭素を、メインストリームへ引き戻す

松本:起業家には、変革者というか、あえて本流を行かないタイプも多いと思いますが、西和田さんは、王道を行くタイプですか?それとも外れたいタイプですか?

西和田:「変革したい」という想いは強いですが、この脱炭素領域においては、あえて王道を行くつもりです。なぜかというと、日本が王道から外れているから。世界的に進むべき方向が決まっているのに、長年のしがらみから抜け出せない日本は、世界の主流とは若干ずれて進んでしまっています。世界の脱炭素のメインストリームは、再エネ、蓄電池、EV、関連するソフトウェアです。日本の流れを軌道修正して、そこに乗せていきたいという気持ちがありますね。

松本:なるほど。変革者と聞けば、「変わったことをする人」というイメージが浮かびますが、メインストリームで物事を成せてない時に、真っ向勝負で王道に挑む人も、ある意味変革者であるといえますね。

西和田:はい。「王道を追求している変革者」のベンチマークは、イーロン・マスクです。彼は、20年前ぐらい前にすでに「これからは太陽光発電がもっとも熱いソリューションになる」と予言し、そこにコミットしていきました。普及するソリューションの条件は、環境に負荷をかけないこと、かつ、その分野で最もコストの安いサービス・商品になること。当たり前のようにも思える、この「大義」と「原理原則」を守ることで、彼は成果を上げてきました。一方、日本は、この大義と原理原則を見失っているような気がします。

世界の脱炭素の最も大きい一番の市場はアジアです。アジアで一番になれたら、実質、世界でトップになります。そういう意味では、地理的にも時差的にも、日本は圧倒的に有利。日本の脱炭素対策をグローバルスタンダードに導き、世界に存在感を示せる存在になっていきたいと思います。

松本:ありがとうございました。

記事をシェア

9割以上のお客さまから
継続支援の依頼をいただいています

「自らやる」「一緒にやる」「やり方を見せる」でお客さまに伴走します。
1営業日以内に担当者よりご連絡いたしますので、お気軽にお問合せください。

まずは相談してみる