創業60年のメーカーが挑む経営基盤の再構築
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I-PEX株式会社(以下、I-PEX)は、精密部品を中心に60年以上の歴史を誇る日本の製造業メーカーです。長年の事業部制による組織運営と現場重視の文化の下で堅実に事業を拡大してきましたが、グローバル化が進展する中で経営管理の“共通言語”が不足し、投資判断や全社最適化の仕組みが十分に機能しないという構造的な課題に直面していました。
そこでI-PEXは、経営管理の視点を刷新し、資本効率と企業価値向上を同時に追求するROIC(投下資本利益率)経営の導入に挑戦しました。本事例では、従来の事業部制の強い自律性を活かしながらも、全社最適を実現する経営基盤への進化に向け、ROICを共通指標として経営判断と組織運営の仕組みを再構築したプロセスと成果について、同社代表取締役社長の小西玲仁氏、経営企画部部長の川邉義哲氏にお話を伺いました。
【お客様からのコメント】

「タイミングと人との出会い、すべてが揃ったプロジェクト。オーツー・パートナーズさんとの2年半、本当にタイミングがよかった。お会いしたのもそうですし、話を進めていったのも、そんなにやり取りせずにすっと入っていった印象があります。
何より、製造業を理解されているという安心感がありました。こちらの固有の事情を汲み取って、柔軟に対応していただける。壁打ちをしながら自信を持って進められるようサポートしていただきました。今、組織は自発的に変わっています。財務や経営企画も自信を持って発言し、事業部と建設的に議論している。まさに目指していた姿に近づいています。これからホールディングス化という新たな挑戦が始まりますが、正解がない中で、引き続き一緒に悩んでいただければと思います。(I-PEX株式会社 代表取締役社長 小西玲仁氏)
【ご支援先】
I-PEX株式会社
I-PEX株式会社は、コネクタや精密部品を中心に事業を展開する、創業60年を超える製造業メーカーです。自動車、情報通信機器、産業機器など幅広い分野を対象に、高い技術力を強みに国内外でグローバルに事業を展開しています。長年にわたり培ってきた精密加工技術や品質管理力を基盤に、多様化・高度化する顧客ニーズに応えながら、付加価値の高い製品開発を続けています。近年は海外拠点の活用や事業領域の拡張にも積極的に取り組み、グローバル市場での競争力強化を進めています。

担当プロジェクトマネージャー
松本 哲治
九州大学卒。オリエントコーポレーション、デロイトトーマツコンサルティングを経て2023年4月よりオーツー・パートナーズに参画。
経営戦略・長期ビジョン策定、事業ポートフォリオ変革、マーケティング戦略、新規事業戦略、組織改革、改革人材育成などのプロジェクト経験を多数有し、経営目線での戦略立案・企業変革を主に担当する。
BS視点が不足した経営課題と、25年続いた事業部制の構造的特性
創業60年を超えるI-PEX株式会社は、日本の製造業として着実に成長を続けてきました。しかし、グローバル競争が激化する中で、従来の経営スタイルからの脱却を模索していました。経営企画部長の川邉氏は、当時の状況をこう振り返ります。
「社長から経営企画を強化していくという指示があり、その中でアセットライト化やBS(バランスシート)視点の重要性が出てきました。それを測る指標としてROICが必要だと考え、支援してくれるパートナーを探していました」
同社の最大の課題は、投資判断基準が不明確で、投資後のモニタリングも不十分とのことでした。
「投資の基準がなく、投資後も追いかける仕組みがありませんでした」(川邉氏)
代表取締役社長の小西氏は、25年続いた事業部制の課題をこう説明します。
「我々は25年間事業部制を続けてきました。各事業部は非常に自立性が高く、それぞれの責任者のもとで独立して動いている状態でした。その自律性は強みである一方、全社最適の視点や資本効率の観点が十分に統合されているとは言えない状況でもありました。コーポレート部門は、それにあくまで伴走しているような存在で、会議の主催者と数字のまとめ役という役割を担いつつ、大きく事業のあり様の舵を取る立場ではありませんでした」
経営会議でも、事業部優位の構造が顕著でした。
「中長期の話をしても『そんなことより今月の数字、来月の数字が大事』となってしまう。10年後の姿を描いても、どうモニタリングしていくのか曖昧なままでした」(小西社長)
この経営スタイルを変えようという風に至った背景には、顧客構造の劇的な変化がありました。
「日本の製造業として60年やってきましたが、昭和から平成中期までは日本にお客様がいることが大前提でした。しかし今は、メインのお客様が海外に移ってしまった。顧客構造は変わったのに、中にいる人間は私も含めて以前のやり方を踏襲してしまっていました」(小西社長)

課題整理とROIC経営の導入、会社全体への変革へ

2023年初頭、転機は偶然訪れました。DX関連の展示会で、I-PEXの担当者が弊社コンサルタントと出会ったのです。
「展示会でオーツー・パートナーズさんと出会い、工場側のKPIと本社側のROICをどう繋げればいいのかという話になりました」(川邉氏)
その後のWeb会議で、川邉氏は確信を持ちました。
「最初はDXの相談だと聞いていたのに、ROICの話が出てきて。こちらの悩みを端的に示していただいたので『それなんです』となりました」
小西社長は、オーツー・パートナーズの提案に強い印象を受けたと語ります。
「製造業という部分に精通されているという印象が強かった。製造業の現場をご存じで『ああ、ご存じやな』という安心感がありました。パッケージで持ってこられるのではなくて『じゃあ最初にこの辺からやりましょうか』という柔軟なアプローチでした」
最初の2ヶ月は、課題を整理し、今後の道筋を描くことに費やされました。
「とりあえず、御社の課題を全部整理してどうすべき?まずはマップ書きましょうみたいな。まずは助走から調査に」(小西社長)
オーツー・パートナーズは、本社と事業部の間に立つ「事業計画室」を最初に巻き込みました。
「事業計画室は事業に紐付いている組織なので、本社とは距離がありました。でも彼らも自分たちの事業の中で、何を物差しに会話したらいいのか、よく分かっていなかった。ROICという共通の物差しで会話ができ始めたタイミングでした」(川邉氏)
ROIC導入により、経営会議の風景が変わり始めました。その変化をこう語ります。
「今まで財務とか経営企画は会議の主催はしても、その場ではほとんどしゃべってなかった。それが徐々に変わっていき、オーツー・パートナーズさんにサポートいただきながら発言できるようになりました」(川邉氏)
「以前は数字のまとめ役でしたが、今は数値分析に基づいて『こうですよ』と言える。それぞれの分野を尊重しつつ話をする、いい形になりつつあります」(小西社長)
さらに、投資判断の仕組み作りに着手しました。
「アセットライト化を進める上で、そもそも投資判断が誰がいつ、どこで判断したのか、どこで振り返ったのか分からない。これでは何をベースにROICを進めればいいか分からないということで、投資マネジメントシステムの構築をお願いしました」(川邉氏)
導入時には事業部からの抵抗もありました。
「話すと『いやいや、やってる』と事業部の抵抗はありました。でも、カスタマイズして『まずやってみましょう』というところから始めて、期間内に導入できました」(川邉氏)
「2024年度の予算のときから投資検討会というのを開いて、投資の中身をちゃんと見るようになりました」
オーツー・パートナーズの支援で特徴的だったのは、継続的な「壁打ち」でした。
「ここでの会話を確認する行為、壁打ちしていただけることで自信を持って話せるようになりました」(川邉氏)
組織文化の変革

2年半のプロジェクトを通じて、I-PEXでは「会議での振る舞い」が変わっていった。象徴的なのは、これまで“数字の取りまとめ役”にとどまりがちだった経営企画・財務が、数値分析に基づいて自信を持って発言し、事業部と建設的に議論できるようになったことだ。小西社長は当時を振り返り、「会議の主催はしても、その場ではほとんどしゃべっていなかった」と話す。
変化のきっかけは、ROICという共通の“物差し”を軸に、会議体や事業計画のつくり方を見直し、運用として回し始めたことにあった。特に、事業部と本社の間に立つ事業計画室を早い段階で巻き込み、同じ指標で対話できる状態をつくったことで、本社と現場の距離が縮まっていった。
加えて、オーツー・パートナーズとの継続的な「壁打ち」により、説明のロジックを何度も確認しながら言語化を磨けたことも大きい。川邉氏は「ここでの会話を確認する行為が、自信を持って話すことにつながった」と語る。こうした積み重ねにより、最初は“無理やりやっていた”ことが、次第に日常の振る舞いとして滲み出し、自然に定着していった。
小西社長は「誰かが言わなくても自発的にそうなっている。会議を見ていても、以前のようなツッコミどころが減り、迷いなくこの方向で進める感覚が出てきた」と変化を実感している。
ホールディングス化への挑戦
I-PEXは現在、次なる成長に向けてホールディングス体制への移行を進めています。
「ホールディングスという形で、次の成長のために大きく形を変えようとしています。60年の歴史を振り返ると、ずっと変わって変えてきている。どれが本当に正しい方法なのか分からないけれど、このままじゃいけない、変えていかなきゃいけないという視点で動いています」(川邉氏)
小西社長は、将来のビジョンをこう語ります。
「私たちは“ニッチな技術”と“ニッチなビジネス”の集団です。むやみに大きくなりたいわけではありません。ただ、とにかく尖りたい。尖った事業がいくつも育って束になれば、結果としてそれなりの規模にもなる。自分たちが『おもしろい』と胸を張って言えるビジネスをつくるのが、一番大事だと思っています」
最後に、オーツー・パートナーズへの今後の期待について話を伺いました。
「正解がない中で、引き続き壁打ちしていただきながら、スポットなのか大きなプロジェクトなのか分かりませんが、またご協力いただけたらありがたいです」(川邉氏)
「できれば、また新たな事業の柱を作っていければいいな。そこをちょっとまたお手伝いいただければ」(小西社長)
伴走型支援が組織変革を後押しした理由
オーツー・パートナーズの支援が高く評価された理由の一つが、製造業に対する深い理解でした。小西社長は、製造業という領域そのものへの解像度の高さに強い印象を持ったと語ります。他社のコンサルティングでは、製造業の実態と乖離した視点に違和感を覚える場面もあった一方で、オーツー・パートナーズの支援は現場感覚に根ざしたものであり、その点が大きな信頼につながりました。
「製造業という部分に精通されているなという印象が強かった。他のところでは製造業とは違う視点でのコンサルティングで『ちょっと違うんじゃないか』ということがありましたが、オーツー・パートナーズさんは違いました」(小西社長)
また、支援の進め方においては、画一的なパッケージに当てはめるのではなく、その時々の課題や悩みの深さに応じて柔軟にプログラムを設計していく姿勢が評価されました。状況に応じて最適な形を一緒に考え、組み立てていくアプローチは、他社にはない特徴だったといいます。
「パッケージではなく、その都度、我々の悩みの深さに応じて柔軟にプログラムを組んでいただけた。これは他に比べてもオーツー・パートナーズさんならではだと思います」(川邉氏)
提案のタイミングやスピード感も、プロジェクトを前に進めるうえで大きな要素となりました。必要なときに、必要な形で提示される提案は、組織に無理なく受け入れられ、実行につながっていきました。段階的に導入できるよう配慮された進め方も、現場への浸透を後押ししました。
「提案のタイミングとスピードが心地よかった。ピタッとはまった感じです。導入しやすいように、ステップ型に整えていっていただけるのはありがたい」(小西社長)
さらに、第三者としての立場から示される客観的な視点も、ROICを経営指標として定着させる上で欠かせない役割を果たしました。社内の人間だけでは伝えきれない指標の必要性や意味を、事業部との対話を通じて丁寧に浸透させていったことが、組織全体の理解につながりました。
「第三者が言っていただけるからこそ、指標として定着しやすかった。我々だけで言っても、社内のものが言っても横に置かれてしまう。事業部との対話で必要性や意味を浸透させていただいたのは絶対に必要でした」(川邉氏)
こうした支援が機能した背景には、I-PEXの組織文化との相性の良さもありました。事業計画室をはじめとした関係者が、最初から真摯に議論に向き合い、積極的に質問を重ねる姿勢を見せていたことが、プロジェクトの手応えにつながったといいます。

この事例で支援したサービス
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