短納期・仕様の多様化に対応できる効率的な仕組みの確立を目指して

BOMを中心とした情報体系整備におけるプロジェクトマネジメントを支援

支援内容
  • 3D CAD+BOM・PLM導入/高度活用

兵神装備は、さまざまな流体の移送、充填、注入、塗布などに携わる産業用ポンプメーカーです。主力製品「モーノポンプ®」の原理は一軸偏心ねじポンプで、この分野における国内トップシェアを誇っています。同社ではシステムの個別最適化が進んだ結果、情報連携に支障をきたすようになり、業務が煩雑かつ非効率的になっているのが課題でした。そこでBOM(部品表)の整備を柱とするシステム導入を決断しましたが、大がかりなプロジェクトを進めるための知見や経験、マンパワーが不足していたため、オーツー・パートナーズに支援を依頼しました。

【お客様からのコメント】

技術本部 技術部 第2グループ グループ長 田中雄介氏
技術本部 技術部 第2グループ グループ長 田中雄介氏

「部分的なカイゼン活動は日常のことですが、大きな仕組みを変えてきた経験はありません。理想像を描くことはできても、それを実現できるかどうかわかりませんし、計画立案やシステムへどう落とし込むかのノウハウもありませんでした。そこでオーツーには、プロジェクトを進めていく全ての過程において、実務レベルにまで入ってアドバイスし、一緒に考えていけるように動いていただいきました。当初の期待どおりです」

生産開発本部 先端技術開発部 R&D特命実行担当 上辻英史氏
生産開発本部 先端技術開発部 R&D特命実行担当 上辻英史氏

「独自のやり方で進めたのではわからない世の中のロールモデルを教えてもらいながら、自分たちで入れていくことができました。このときオーツーは引っ張りすぎず適度にフォローする姿勢だったことから、問題意識を持って考え行動するメンバーが増えたことも大きな成果です。そのなかでオーツーは、自分たちの考え方や世の中の事例を押しつけることなく、私たちに合わせて話を進めてもらえたことが印象的で、実務担当者の立場では取り組みやすかったようです」

【ご支援概要】 

  • BOMシステムの導入におけるプロジェクトマネジメント、各部門およびシステムベンダーとの調整を実施
  • 全社を俯瞰したシステムのアドバイスを、世の中の事例を提示しつつ兵神装備に合わせて実施
  • 引っ張りすぎず適度な距離感で「伴走」し、業務改革に必要な考え方や実務の手法を社員に伝播

【ご支援先】 

兵神装備株式会社

設立1968年
従業員数473人(2023年1月1日現在、連結)
売上高160.2億円(2022年12月期、連結)
事業内容産業用ポンプ(モーノポンプ)及び周辺機器の製造・販売

モーノポンプで私たちの生活を支える兵神装備

兵神装備の主力製品である「モーノポンプ®」や「モーノディスペンサー®」は、上下水道、食品、化学、製紙、自動車、電機など、幅広い分野で利用されています。同社のポンプは高粘度、高濃度の液体や固形物を含んだ液体、粉体まで、無脈動で定量移送できるのが特長です。例えば、全国各地の上下水処理場では汚泥の移送や薬剤注入に利用され、食品業界では味噌、イクラ、はちみつ、ポテトサラダなどの移送や充填に使われるなど、多種多様な流体の高精度移送でさまざまな産業や私たちの生活を支えてきました。

同社は船舶用装備品としての需要に応えようと、港町である兵庫県神戸市で1968年に創業しました。地名が社名の由来になっており、現在も本社を置いています。一方、ビジネスの発展を見越し、5年後には創業者の出身地に滋賀工場(現・滋賀事業所)を竣工。現在、製造・開発を一手に担う主要拠点となっています。

「卓越した流体技術と創意で世界を支える」を企業理念に掲げ、顧客のニーズに応じたオーダーメイドで培った技術力は、オンリーワンの高い評価を得ており、国内市場占有率は推定90%を誇ります。また2022年12月期の売上高は過去最高の160億円となるなど、業績も好調です。

また、こうした実績におごることなく、CX(顧客体験価値)、DX(デジタル変革)、EX(従業員体験)と、社内外の全方位をよりよくする活動を推進しています。なかでも、働きがいのある職場づくりに関する活動は熱心で、健康経営優良法人の中小規模法人部門において上位500社である「ブライト500」に認定されています(2021年度)。

個別最適のシステムが部門間連携の足かせに

一見すると好調そうな兵神装備ですが、さらなる事業の伸展を見据えれば問題もありました。なかでもシステムについては、各部門が個別最適で導入・運用してきた結果、サイロ化が進み、部門間の連携が欠かせない業務フローが煩雑かつ非効率になってしまっていたのです。

滋賀事業所で設計を担う、技術本部 技術部 第2グループ グループ長の田中雄介氏は、以前の問題を次のように説明します。

「全体として幹となるものがない問題の多い仕組みになってしまっていました。その最たる問題が“簡単なことが簡単にできない”、“情報伝達がスムーズでない(個人に依存)”という2点です。

兵神装備では、標準品を大量生産するのではなく、受注してから設計することが多分にあります。ただ、標準品の場合は、上流工程のシステムからデータを得ても、下流の部門へ人を介さずデータ連携する仕組みがありませんでした。受注してから設計する場合は、上流工程のシステムからデータを得ようとしても、そもそもその項目が用意されておらず、上流の担当者が情報を付け足し、下流の部門へ連携するという運用しかないという状況だったのです。

つまり、実質的に人でシステムをつないでいる状態です。これでは次の工程での作業着手までに時間がかかりますし、全社視点でのデータ活用も難しい状況でした。また上流側は十分だと考えて渡した情報でも、下流側では不十分なケースもありました。それに気付かずに作業した結果、製品の不具合につながる恐れがあります」

こうした状況を変えるためシステムを見直すことになったのですが、そのきっかけは、20年以上前から導入・運用されていた「品番」にあります。

生産開発本部 先端技術開発部 R&D特命実行担当の上辻英史氏は、次のように振り返ります。

「品番は全社視点で絵を描いて導入したわけではなく、当初は購買部門で発注業務を軽減するために導入しました。しかし、便利なのでいろいろな部門が利用するようになり、品番の管理が増え、データ連携ができないため設計者の面倒な作業もどんどん増えていったのです。限界だと感じるようになり、ここでシステムを見直して効率の良い仕組みを目指すべきだと考えました」

上辻氏は、もう1つの背景を明かします。日本市場のシェアは9割以上だと言われているものの、競合の出現や価格の低下があり、さらに今後は人口が減少していくことから、経営戦略上、海外進出は不可欠でした。

「滋賀事業所だけなら直接コミュニケーションをとりながら作れてしまいますが、もし海外に工場を作った場合、指示を出すためには品番や図面の体系を整備が欠かせません。海外展開を見越した仕組みも作っておきたかったのです」(上辻氏)

過去のプロジェクト推進力や実務に踏み込んだ支援に期待

こうした始まったのが、「新世界プロジェクト」です。しかし、プロジェクトを進めるための体制構築に課題がありました。

「仕組みを大きく変えるには、一旦ゼロベースから“あるべき姿”を描き、“現在の状況”を把握したうえで、ギャップを明確にし、このギャップをどのように埋めていくか道筋を計画し、そして行動に移さなければなりません。しかし、社内のメンバーには、これらを進めるための知見や経験がなく、マンパワーも足りない状況でした。そこで、これら全ての活動をファシリテートしてくれ、マンパワーを補うために実作業も支援してくれる会社を探すことにしました」(田中氏)

「弊社は自分たち独自のやり方で業績を伸ばせてきたのですが、一方で井の中の蛙になってしまう恐れもありました。そこで新世界プロジェクトでは、外部の考え方を取り入れると同時に、仕事の仕方も参考にしながら社員を成長させたいと考えました。そのためにも、頼りきりにならず、相談しながら自ら考える機会を与えてくれるコンサルタントを求めたのです」(上辻氏)

しかし、強力な推進力があり、さらに実務まで踏み込んで支援できるコンサルティング会社は、なかなか見つかりません。ほぼ自力で準備・企画・詳細計画までは進めましたが、その先の実行計画とシステム構築のフェーズを前に、上辻氏は強い不安を覚えるようになったといいます。

そこで上辻氏は、かつて設計部門が取り組んだ設計改革プロジェクトを支援していたオーツー・パートナーズのコンサルタントに連絡をとり、このような取り組みでも支援が可能かどうか相談を持ちかけました。

「支援可能だという回答でしたので、設計改革で実際に手を動かしながら、弊社設計者を催促・後押し・フォローしていただいた実績のあるオーツー・パートナーズに改めてお願いすることにしました。コンサルタントと意見交換し、プロジェクトへの思いが一致したことも理由です」

BOMを中心とした情報体系を整備

このプロジェクト名は、「新」「設計改革プロジェクト」が変化して「新世界プロジェクト」と名付けられました。由来からもわかるように、そもそもは設計改革の一環として位置づけられたプロジェクトであり、最初のスコープはBOMを中心に据えて設計と製造をつなぐだけにするつもりでした。

ところが、営業やサービス(保守)など他の部門も対象に入れてほしいという声が寄せられます。そこで全社視点で課題を洗い出したところ、6つの「目指す姿」に向けて対応することになりました。

①BOMを中心とした情報体系整備
②ユニットに対する組図の作成、他
③標準(推奨品)の整備とフロントクローズ
④責任範囲の明確化と承認行為の徹底
⑤見積・受注と設計以降の密連携
⑥情報が一気通貫でつながるデータモデル

これらを実現することにより、短納期、仕様の多様化に対応できる効率的な受注・設計・製造の仕組み(フロントクローズによる商品提案力向上、情報連携高度化による業務効率化)を構築できると考えたのです。そして、実現したい将来の状態をイメージして「簡単なモノは簡単に、難しいモノは丁寧に」というスローガンを掲げました。例えば、難しい設計を丁寧に対応して理解しやすい図面で表現できれば、問い合わせを受ける機会は減るはずです。

兵神装備では全体感をつかむために、これら6つを一度に進めることにします。

「オーツー・パートナーズからは1つずつ進めたほうがいいというアドバイスがありましたが、範囲を広げることで全体の課題が明確になると考えて、悩みながらも広げることにしました。そうすることで、会社の仕組みやシステムについて考える機会になりましたし、部門間を越えたつながりができるなど多面的な収穫がありました。しかし、やはり広げすぎたことから実行に移す段階で目処が立たなくなってしまい、各システムを順番に、短期間で集中して取り組む方針に変更しました」(田中氏)

そこでまずはE-BOM(設計部品表)のシステム導入に注力します。オーツー・パートナーズは主にプロジェクトマネジメント、部門間調整、そしてシステムベンダーとの間を取り持つ役割を担いました。

BOM導入では困難と向き合うこともありましたが、障壁を取り払うためにオーツー・パートナーズが果たした役割は大きかったと田中氏は話します。

「部分的なカイゼン活動は日常のことですが、大きな仕組みを変えてきた経験はありません。理想像を描くことはできても、それを実現できるかどうかわかりませんし、計画立案やシステムへどう落とし込むかのノウハウもありませんでした。そこでオーツーには、プロジェクトを進めていく全ての過程において、実務レベルにまで入ってアドバイスし、一緒に考えていけるように動いていただいきました。当初の期待どおりです」

課題から脱却するための道筋が完成
プロジェクトを通した人材育成でも成果

E-BOMのシステムは、2020年7月に一部の稼働を開始しました。通常業務の合間を縫って構築を進めたため、準備を始めてから5年あまり、オーツーが支援を始めてからも4年近くが経過していましたが、田中氏は前向きに捉えて成果を強調します。

「全体の計画で柱となるBOMを整備したことで、以前の仕組みから脱却するための道筋ができました。時間こそかかってしまいましたが、“簡単なモノは簡単に、難しいモノは丁寧に”へ向けて、大きな前進です」

作業工数削減に繋がる取り組みは進んでいないので、現時点では数値で表せる効果は出ていません。作業工数だけを見ればむしろ増えたのですが、これまで個人やチームによってバラツキがあった承認行為をBOMシステムで対応するようにしたためでした。同社では将来のISO認証取得も視野に、このタイミングで承認を徹底する仕組みを取り入れたのです( 2021年ISO認証取得済み)。

一方、上辻氏はプロジェクト活動を通じた人材育成の成果を強調します。

「これまであまり意識できていなかった世の中のロールモデルを教えてもらいながら、自分たちで導入を進められました。このときオーツーは引っ張りすぎず適度にフォローする姿勢だったことから、問題意識を持って考え行動するメンバーが増えたことも大きな成果です。そのなかでオーツーは、自分たちの考え方や世の中の事例を押しつけることなく、私たちに合わせて話を進めてもらえたことが印象的で、実務担当者の立場では取り組みやすかったようです。

また、部門間の連携が増えたことで、部分最適に向きがちだった目線を上げて、全体最適を考えられるようになってきました。部門を越えるとなると前提知識や考え方も異なるため、資料を使って議論しなければなりませんが、オーツーが作成した資料を見るうちに、わかりやすく相手に伝わる資料の作り方を学べました」

お客さま満足度の向上と設計者の成長に向けて
新たなプロジェクトが進行中

現在、各システムを順番に取り組んでいる最中で、「技術部3D化プロジェクト」と「S-BOM(サービスBOM)構築プロジェクト」を進めています。

技術部3D化プロジェクトでは、まずは設計者が3D CADを利用しやすい環境を整え、2024年末を目処に、全体の7~8割を3D CADで対応することを目標に取り組んでいます。

「設計者の3D CAD利用が進んで定着すれば、生産工程で製造部が活用するための基盤作り、商談で営業部が活用するための基盤作りと、次のステップが見えてきます」(田中氏)

S-BOMの運用開始は2023年7月を予定しており、サービス営業部が顧客に対して簡単かつ正確に提案するための土台となります。

6つの「目指す姿」の実現で「簡単なモノは簡単に、難しいモノは丁寧に」が可能になりますが、その重要性について上辻氏は次のように語ります。

「お客さま満足度を向上させるのはもちろん、設計者の成長を促すためにも重要です。成長するには丁寧に考える時間が必要だと考えていますが、残念ながら現状の仕組みでは時間に追われてしまうので、その機会を提供できていないという反省があります」

田中氏は、目標に向けて着実に進んでいるものの先は長く、その道のりにおけるオーツーの伴走に期待しているといいます。

「弊社を長年にわたり支援してきて“兵神装備を最も深く理解している社外の方”として対応いただいています。兵神装備の将来に役立つ、社員では思い付かない提案や、社員では突破できない壁をこじ開けるような言動を期待しています」

そして上辻氏がオーツーに対して期待するのは、全体最適の視点でシステムを捉えるための「道しるべ」であり続けることです。

「各部門が主体となってシステムを持つ方針は今後も続ける見込みで、それゆえの強みがある一方で、どうしても全体像が見えにくくなってしまいます。ITの広い知見と外の目線を持ちながらも、兵神装備の業務と組織を熟知しているオーツーのコンサルタントには、全社のシステムを俯瞰したうえでの提言を、今後も続けていただきたいです」

依頼内容がお決まりではない場合でも
課題の整理からお手伝いします

製造業の業務プロセスを熟知しているコンサルタントが、
お客さまのお困りごとをお伺いします。お気軽にご相談ください。

まずは話をしてみる