記事詳細

日経ものづくり/エンジニアリング・チェーン改革 第4回 事例1(その4) 情報基盤の構築(後編)~BOMの活用法を詳細設計~

技術ディビジョン シニアコンサルタント 團野 晃

 

前回(2011年8月号)から、「業界世界一」「売り上げ1.5倍」を目指すA社の業務改革プロジェクトにおける実行フェーズの解説を開始した。
具体的には、優先度が高い施策である「情報基盤〔BOM(部品表)・技術情報〕の構築と改革」である。前回は、「案件BOM」「設計BOM」「製造 BOM」「出荷BOM」という4種類が必要であることが明らかになった。今回は引き続き情報基盤構築の実行フェーズとして、BOMの活用方法の決定、主要属性と管理技術情報の整備、?活用方法の検証、の進め方を紹介する(下図)。

 

■構成の推移を考える

 

BOMの活用方法を決めるためには、全ての業務シーンを対象とした検討が必要になる。その中で、詳細な業務ルール、情報基盤に求められる機能やデータをき ちんと定義する。具体的にはまず、部門とプロセスの視点で詳細な業務フローを作成し、その中からBOMの種類(もしくは機能)ごとに関連する業務フローを 抽出し、概略業務フローを幾つも作成する。これらが、各BOMの活用シーンとなる。
ここでは、「データ」「業務」「組織」「システム」の詳細要件を定義するが、それらの関係性を可視化するために、「業務」と「実現方法(求められる機能と業務ルール)」をまとめる(下表)。これで、検討の漏れもチェックできる。

BOMの種類によって何が異なるかといえば、つまるところ、各業務シーンにおいて活用/登録/管理すべき構成の違いである。ただし、各BOMに違いがある とはいっても、営業から設計、生産計画、手配、組み立て、出荷と流れる全業務プロセスにおいて、互いに連携を取りながら整合性を保つことが必要となる。
この基本的な考え方を明確にした上で、BOMを活用する業務と、その他のシステムや業務ルールで行う業務を切り分けながら活用方法を検討した。例えば、案件BOMの活用を検討する際に、以下のような討議をする場面があった。

 

O2(筆者)「案件BOMの活用では、どんな業務が想定されますか?」
A氏(営業担当者)「見積もり検討用に、工程単位で基本売価を自動積算し、過去の実績原価などを参考にして利益率をシミュレーションしたいです。将来的にはこのタイミングで、原価企画できるようにしたいと思っています」
O2「全ての工程が、過去の案件から流用できるわけではないと思うのですが、その場合はどうするのでしょうか?」
A氏「まず、製品の動作速度などの仕様を基に標準の構成を流用できるかを検討し、できない場合は基本構造だけでも活用できるかを判断して、見積もりを行います。仕様から検索できるとよいのですが・・・」
O2「顧客要求仕様から構成を自動検索し、引き当てるためのルールはある程度明確になっているのですか? つまり、どの仕様値が構成の流用可否判断の定量指標になるかということですが」
A氏「ベテラン設計者や、技術的な営業が可能な一部の人材の頭の中にはありますね。今は、それらの人に聞く必要があります。過去の検討結果が管理されていないこともあって、属人的になっているのが現状です」

 

営業における、提案型営業の実現と見積もり精度の向上には、2つの取り組みを行う必要がある。1つは、過去構成の流用による見積もり効率および見積もり精 度の向上だ。しかし、顧客要求仕様に応えながら、社内での設計レスと売り上げ拡大を実現するのは難しい。過去の生産機種からは、顧客要求仕様と製品構成の 関係が妥当かどうかを判断するための情報が、必ずしも読み取れるわけではないからだ。そこで、機能ユニットごとの仕様値の範囲を明確にしたり、標準構成を 取り決めたりして、顧客要求仕様と設計仕様、製品構成の間で変換とひも付けを行うことが必要になってくる。
ただし、これを実現するには相当の時間を要するため、A社の改革プロジェクトにおいては1年後に、ある特定の商品群から適用していくことになっていた。その前の段階として取り決めるべき項目は「検討結果を管理活用できる仕組みと、売価・原価の可視化の取り組み」に限定するようにした。
一方、当面の営業場面を支援する現実的な方法として、実際に生産された加工機に対する代表的な設計仕様情報管理の徹底と、その再利用を検討した。

 

A氏「どのような情報があれば顧客要求に合った構成を探しやすいかを明確にすることは、それほど難しくありません。過去に生産した加工機や流用元として推奨する加工機の情報、工程くくりの構成情報がしっかり管理されていて、活用できる機能を情報基盤が保有していれば、次の案件のときに探す手間も省けます」
B氏(設計者)「営業段階での見積もりの根拠である仕様や議事録、構成の流用元が分かるようなデータが可視化・ひも付けされていると、問い合わせの手間などを減らすことができてうれしいですね」

 

こんな討議を、設計BOM、製造BOM、出荷BOMでも行うことで、案件BOMから設計BOMの構成推移と、そのときの業務・データ要件、必要な業務ルールを文書化した(下図)。設計BOMと製造BOMの連携においては、実行計画策定フェーズの深掘り検討時に設計BOMの先行公開を考慮したのと同じ考え方 を活用。出荷BOMにおいては、設計指示の情報と出荷した現物が不一致となりがちな個別受注特有の業務を考慮し、正しい情報が蓄積される方法を取り決めた。

 

 

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2011年9月号 p93~97「エンジニアリング・チェーン改革」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。