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日経ものづくり/エンジニアリング・チェーン改革 第3回 事例1(その3) 情報基盤の構築(前編)~改革変化点に注目して取り組む~

技術ディビジョン シニアコンサルタント 團野 晃

 

「業界で世界一」、すなわち「売り上げ1.5倍」を目指して業務改革プロジェクトを進めているのが、紙製品の製造装置を開発・製造するA社である。 前回(2011年7月号)までは、このプロジェクトの実行計画を策定するプロセスについて紹介してきた。今回は、その実行フェーズにおける取り組みについ て解説する。

 

■深掘り検討の結果を有効活用

 

A社のプロジェクトでは、「情報基盤〔BOM(部品表)・技術情報〕の構築と改革」が優先度の高い施策となった。この情報基盤の構築のために、改革を目指すべき業務シーンとそれに見合ったBOMの構成/種類を明確にしていった様子を紹介する。
実行フェーズに先立つ実行計画策定フェーズで行った深掘り検討は、計画を立案するに当たってのあるべき姿や、課題、実行施策を改革メンバー間で共有するこ とにつながると前回説明した。実は、この深掘り検討の結果は、実行フェーズにおいても業務量や詳細内容を検討する際の一助となる。
情報基盤の構築では、まず同基盤の活用によって改革を目指すべき業務シーンを明らかにする。その上で、その業務シーンに見合った情報の活用単位やそれらの情報を管理する、BOMの構成/種類を決めていく(下図)。

手始めとして我々は、実行計画策定フェーズに実施した深掘り検討の結果を有効に活用しながら「どんな情報基盤を用いてどんな業務を行いたいか」を詳細に定義し、業務・データ要件としてまとめていった。
ここで定義した情報基盤は、BOMの構成を管理し、情報伝達するためのものだけではない。BOMの構成にひも付く技術情報(設計の図面、部品の仕様、設計 ツール、生産・保守のマニュアル)、付属情報(品目属性)、販売製品のベースモデルの構成、設計ロジックなどを管理・登録・活用できるものとした。情報の 利用は引き合い時からメンテナンスまでの製品のライフサイクル全体とし、エンジニアリング・チェーン(ECM)とサプライチェーン(SCM)を包含するものとした。

 

■変化点を抽出してシーンを定義

 

改革を目指す業務シーンについては、情報基盤の活用によって変化すると考えられる業務(改革変化点)に絞って定義を行うという方針で進めた。この段階で情 報基盤は存在しないが、深掘り検討の結果に基づき定義した「どんな情報基盤を用いてどんな業務を行いたいか」のイメージから変化点を想定できる。情報基盤 を導入する前後で大きく変化のある業務は、データを扱うところのみである。
業務フローを全て作成すれば、より緻密な検討が可能となるが、逆に変化点以外の調査に時間を費やしてしまい、効果的なポイントの深掘りができないことが懸念される。それを考慮して、短期間で業務シーンを定義するために、変化点に集中した。
A社が情報基盤を活用して目指す業務の姿は、標準部分とカスタム部分の業務を分離して、標準部分では設計レスの割合を増やし、カスタム部分では引き合いから生産までをよりコンカレントに実行しながら、生産計画などの個別業務を効率良く有効に実施することである(下図)。
そのあるべき業務の姿を想定しながら、それを実現するために、情報基盤を活用して変化させるシーンを、以下のステップで定義した。

1.改革変化点を洗い出す
現状の業務フローからECMとSCMの間で図面や構成情報をやりとりしているシーンは22カ所だった。それらを洗い出し、業務シーンをまとめた。

 

2.洗い出したシーンごとに、達成したい業務を描
抽出した業務シーンごとに、どんな業務を達成したいかを改革の実務メンバー内で討議した。例えば、営業から設計に仕様を伝えるシーンにおいては、「営業が 中心となって顧客に提案した内容を速やかに社内および関係者で共有できるようにすれば、実現性の検討や標準部分とカスタム部分の業務切り分けを行える」と いった具合だ。

 

3.達成したい業務を行う詳細の手順、担当部門、データを決める(下表)
前述の業務シーンのそれぞれにおいて、達成したい業務シーンを実施する際のシナリオ(詳細の手順と担当部門)を作成した。そのシナリオに基づき、そのシーンの業務遂行に必要なデータ、書類、図面などを定義していった。

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2011年8月号 p83~87「エンジニアリング・チェーン改革」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。