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日経ものづくり/エンジニアリング・チェーン改革 第1回 事例1(その1) 業務改革の計画策定~現状分析の前にあるべき姿から~

技術ディビジョン シニアコンサルタント 團野 晃

 

コストダウン、開発・生産リードタイム短縮など、活動のテーマや目標レベルは違っても、多くの企業が課題を解決しようと継続的な改善活動に取り組ん でいる。しかし、国内市場の成長が緩やかになり、海外市場、特に新興国市場が拡大期となってきた現状に対応するには、課題の継続的な改善だけではなく、抜 本的な業務改革を迫られることが多くなってきた。
抜本的な業務改革という観点では、従来はサプライチェーンを対象とすることが多かった。受注から納品まで、実際にモノとお金が流れる部分だからだ。しかし 近年、このサプライチェーンへ、いかに優れた製品を効率的に供給するかという観点で、エンジニアリング・チェーンの改革も強く求められている。

 

■世界一を目標に

 

A社が業務改革の実施を考えたのは”業界で世界一”を目指したためだ。同社は国内では既にトップシェアを確保しており、業績も着実に伸びている。
しかし、日本市場だけではなく海外市場も視野に入れたさらなる飛躍のために、 “業界で世界一”を経営目標に掲げた。
一般的に、業務改革プロジェクトでは、短い期間で高い効果を確実に得ることが求められる。しかし、具体的な課題解決の目的を明確にする前に、手段が語られてしまうことも少なくない。
業務改革の目的をしっかりと洗い出した上で、改革実行計画を中期・長期のスパンで策定することが肝要である。
さて、A社の事例に戻ろう。同社が業務改革を実施したいという背景には、次のような実情があった。

 

1.顧客ごとの仕様で製品を納入するという個別受注品が主流ではあるが、顧客要求の変化が進んでおり、単に顧客仕様に従うという特注品による高利益案件への依存では競争力を維持できなくなりつつある。すなわち、提案型の案件獲得の必要性が生じている。

 

2.売り上げをさらに増やすためには、標準機をベースとした販売手法や設計レスによる処理可能案件数の増加、海外市場への積極的な展開(海外拠点を増やし、拠点間の情報共有基盤を整備すること)などが必要である。

 

3.上記を実現するためにA社内で検討を重ね、具体的な施策案も出しているが、施策の抜け漏れの確認、実行順位の設定、改革全体像の把握、効果の検証などが不足している。

 

同社の製品は個別受注ではあるが、実際の設計は7割が流用設計である。それにもかかわらず、案件や人による工数・コストのバラつきが大きい上、案件の増加 によって負荷が増え、検討不足などによる業務の後戻りが起きている。さらに、一品一様の装置であるが故に流用設計時に亜種が増え続け、流用設計の効率が悪 化していた。

 

■未来を先に描く

 

業務改革プロジェクトの実行計画を策定するには、このような状況に対して、どのような施策が最も効果的であるかを分析する必要がある。ただ、全社的なプロ ジェクトの実行計画を策定するとなると、半年はかかることが多い。しかし、半年もかけていては、早く結果を出したいという企業ニーズには合わないし、何も アウトプットがないままでは途中でプロジェクトが頓挫して
しまう可能性もある。
そこでA社では、筆者らが考案した独自の計画策定方法を適用し、2カ月という短い期間で実行計画を作成した(下図)。

その結果として作成したのが、具体的な実行計画書と5カ年計画である(下図)。その流れを簡単に説明しよう。

A社では、現状把握には多くの時間をかけず、あるべき姿を先に描き、その間に現状調査を行った。その上で、あるべき姿と現状のギャップを分析して課題を明確にする。課題を明らかにした後には、重要な施策の仮説を立て、深掘り検討する項目を決定する。
なぜ、実行計画が決まっていない段階で深掘り検討するかというと、全体計画だけを行うと、全体を俯瞰した最適な計画は策定できるが、広く浅い、一般的な施 策に陥ってしまうからだ。あるべき姿を何十枚というプレゼンテーション資料で表現するよりも、具体的に「できる」ことを見せるだけで、改革のやる気、理解 度は全く変わる。我々が、深掘り検討をこの段階で行うのは、そのこだわりからだ。

 

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2011年6月号 p88~93「エンジニアリング・チェーン改革」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。