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日経ものづくり/体質改善3D設計 第13回 エレ/メカ連携1~エレとメカの違いを認識する~

リサーチ フェロー、Ph.D. 前田篤志

 

昨今、機械製品といっても、そのほとんどに電気・電子機器が組み込まれており、機械設計と電気・電子設計の融合、いわゆるエレ/メカ連携が不可欠な時代となっている。
今回からは、このエレ/メカ連携の進め方について解説する。

 

本コラムではこれまで、3次元設計をベースにした開発プロセスの構築、または再構築のための取り組みを解説してきた。単に3次元CADをツールとして導入することではなく、仕事の進め方そのものを変革して効率化を実現する方法や手段がテーマである。
このテーマに即して言えば、エレ/メカ連携をどのように進めるかもまた、極めて重要な課題だ。ところが、現状のエレ/メカ連携は筆者の見るところ、いわば「メカ/メカ連携」になっていることが多い。
電子部品であってもメカの一部として扱われ、メカ設計の価値観やプロセスの中で製品に組み込まれていく。この状況を見直すことが、エレ/メカ連携を推進していくカギであると考えている。

 

■設計者の考え方の相違

 

電気・電子系(エレクトロニクス系)の技術者と機械・機構系(メカニクス系)技術者では、物事に対するアプローチに根本的な違いがある。それは、要求される成果物で使う単位系の差にも表れる。
メカ系技術者は、長さの単位[m]、質量の単位[kg]、時間の単位[s]を基本単位とするMKS単位系を基本とする。一方、エレ系技術者は、電気回路や 電磁気学を扱うので、電流[A]、電圧[V]、磁界の強さ[A/m]などを用いる。この場合、厳密な表現を用いると、エレの要素を加えた単位系をMKSA 単位系と呼ぶ(総称してMKS単位系とする場合もある)。
では、異なった単位系の物理現象を扱っていることによって生じる差とは何か。例えば、「動作」という言葉からメカ系技術者は、人の動作や挙動、マシンの挙 動など、実体があるものの動き全体を連想するだろう。これに対してエレ系技術者は、回路が想定通りに動作するかどうかといった、OK/NGで判断されるも のを連想する(下図)。

実は、全く意味が違ってくるのに、日本語として大筋では合っている言葉。このような言葉を使った微妙な共有が、実は一番の擦れ違いを生じさせている原因で ある。これを、単なる言葉の解釈の問題と片付けて解きほぐす作業を怠っていると、擦れ違いの解決がますます困難になっていく。
メカ系技術者とエレ系技術者ではイデオロギー的に明らかに言葉の前提が違うので、当然、目指すゴールも違ってくる。本来は、ある程度経験を積んだベテランの技術者が2つ以上の分野を横断的に見るべきなのだが、肝心のベテラン陣になるほどこの問題を軽視している感がある。

 

■実態はメカ/メカ連携

 

このように、前提の異なる2分野の技術を統合する際、本来ならばメカ系技術者とエレ系技術者の双方のアプローチを経て出てきたものを統合するプロセスが、エレ/メカ連携の肝として機能すべきであろう。しかし、現実の製品ではメカ設計の枠組みで統合が行われている(下図)。

 

例えば、高級車向けのハイブリッド・システムには、約800個のさまざまなセンサが搭載されている。もちろん、車載センサ自体は電子機器のカテゴリに分類される部品だ。しかし、なぜこんなに数多くのセンサが搭載されているのかという観点から見つめ直すと、そこにあるのは「判定機能という電子回路を持つ機構部品」である。
本来メカ的な機構のみで担っていた部位をエレ的機能に代替させることによって、飛躍的な小型化、軽量化、薄層化などが図られたのは事実であろう。ところ が、設計対象はエレによる代替が進んでも、設計思想は基本的にはメカのままである。そして、現状の設計プロセスでは、メカ系技術者が担当する「部品配置容 積」の都合が、エレ系技術者が所望するエレクトロニクス機器の特性よりも優先される、という暗黙の図式が成り立っている。
その理由の1つは、自動車という製品の特性にもあるだろう。車載センサにしても、製品開発リードタイムの短縮を実現するためには、車体への搭載に先立って車載センサという製品を完成させておかざるを得ない。つまり、車体設計時のエレ系技術者の仕事の進め方は、既存の部品を採用し、その動作を検証して不具合 対策を実行し、その情報をメカ系技術者に提供する、という後付けの形となっている。

 

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2011年4月号 p104~108「体質改善3次元設計」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。