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日経ものづくり/体質改善3D設計 第11回 不具合の未然防止1~DRの問題点と改善策~

技術ディビジョン・シニアコンサルタント 宮木邦宏

 

本連載ではこれまで、3次元CADの効果的な運用を行うための改善ポイントや、製品視点からの改善としての標準化、モジュール化について紹介してきた。今回と次回の2回では、「不具合の未然防止」を目的とした仕組み構築のポイントについて解説する。

 

■製品の開発力を向上

 

まず、筆者らが提唱する3次元開発プロセス構築のための方法論である「3D-DPRM」における不具合の未然防止の位置付けについて説明する。
3D-DPRMでは、3次元設計をベースとした開発プロセス構築に向けた取り組みをAからHまでの8グループに分類し、それぞれに属する活動テーマを確実に定着させていく。
具 体的には、3次元CADの導入(グループA)から始まり、3次元形状の構築方法や運用ルールの定着(同B)によって3次元設計の強固な基盤づくりを目指 す。それが終わると、3次元CADを使って効率的な開発業務ができるよう、3次元設計手法を定着させるための抜本的な見直し(同C)を行って、3次元設計 の効率向上と活用の拡大を図り(同D)、効果を刈り取れる(同E)ように取り組みを進めていく。この段階に至ると、いよいよ「製品品質の早期作り込み」を 主テーマとした活動になる(同F、G)。強固な3次元設計基盤を生かしながら、「解析主導型設計」〔第7回(2010年10月号)で解説〕などを定着させ ていく。3D-DPRMでは、ここまでを3次元開発プロセス構築の取り組み範囲としている。

前回(2011年1月号)まで3回にわたって解説した「設計の標準化/モジュール化」と、今回から解説する「不具合の未然防止」は、その後の段階であるグ ループHに属する活動だ。この段階では、製品視点からの開発力向上を目的にしたもので、3次元開発プロセス構築とは分離して考えることも可能なため、状況 によってはA~Gよりも前に行う場合もある。
ただし、それはあくまで一定レベル以上の開発プロセスが構築されていることが条件であり、それらなくして大きな効果は得られない。つまり、一連の取り組みの中では、最上位の活動という位置付けとなる。

 

■3次元時代のDR

 

不具合の未然防止を実現するのに最も重要なのは、過去に発生した問題を再発させないことに加え、新たに発生し得る問題を予見することである。このため、多 くの企業では設計の初期段階から、ベテラン設計者や有識者の知見に基づいたチェックを徹底している。これを実際に開発プロセスに組み込んだのがデザインレ ビュー(DR)である。筆者らも、不具合の未然防止を実現する際に、まずは3次元モデルを活用したDR主導型設計を定着させることを重要視している。
DR では、設計書や仕様書、プログラムなど各設計フェーズにおける成果物を営業/購買/製造といったさまざまな担当者の視点からレビューする。これによって、 設計者の視点だけでは漏れてしまう内容を精査し、品質を確保する。一般には製品企画や構想設計、詳細設計などが終了した節目に会議形式で行われ、指摘され たことに対策を施して、次の段階に進む。

従来の2次元設計プロセスにおけるDRの最大の課題は、部品の形状や部品間の位置関係など、製品全体の正確なイメージをつかみにくいことだった。
2次元図面だけでの検証には限界があるので、試作への依存度が高くなる。設計品質が作り込まれるのは試作後になることが多くなり、設計変更と試作を繰り返したり、大きな手戻り(根本的な設計の見直し)が生じたりする。
しかし、3次元設計へと移行することで、この点は大きく変わった。2次元図面に比べて直感的に製品を理解しやすく機構の動作なども確認できるため、議論が 進 みやすい。これまで試作しないと確認ができなかったものが、低コストかつ短期間で確認できるようになり、設計検討の前倒しが可能になっている。
DRを支えるインフラストラクチャーも、ここ数年で大きく改善した。大型スクリーンに3次元データを表示して議論する形態は、当たり前のことになってい る。 ネットワークのデータ転送速度も向上し、遠隔地からでも3次元データを参照しやすくなったことで参加メンバーの地理的制限もなくなりつつある。ビューワも 進化し、CADを取り扱えなくても、3次元データの確認を容易な操作で行えるようにもなってきた。

■DRの2つの問題

 

しかし、これだけDR主導型設計の環境が整ってきているにもかかわらず、筆者らがコンサルティングで携わった現場からは「DRがうまく機能しておらず、改善したい」との相談が絶えない。
「何度もレビューしているのに、量産直前の段階まで不具合が発見されずに大きな手戻りが発生している」とか、「客先で不具合が発見されるケースが減らず、なかなか品質が上がってこない」というのだ。
このような問題を抱える企業には、幾つかの共通点がある。
第1に、DRの形骸化である。具体的には、

 

▶DRがセレモニーになり、具体的な問題点が指摘されない
▶指摘が場当たり的で、重要な問題は議論されない
▶有識者が慢性的に忙しく、DRに参加できない

 

といった状況に陥り、DR本来の機能が十分に発揮できていないのだ。いくら3次元モデルを利用して設計の内容をチェックしやすくしても、本質的な議論が進まなければ、製品品質の早期作り込みができないのは当然である。

 

ある企業でDRに関する話を聞いたときに、「私はいつも『メンテナンスのことは考えていますか?』と、同じ質問をする」と答えたベテランのサービス部門 リーダーがいた。この人にとってみれば、自部門の作業に関わることであり、くぎを刺すための質問をしているつもりなのだろう。
しかし、具体性のない質問には設計者は答えようがないし、「考えました」で終わってしまう恐れも否定できない。たとえ設計者がメンテナンスのしやすさに配慮していたとしても、それがサービス担当者の期待と異なるならば、手戻りの原因となる。
具体的であっても、場当たり的な指摘では役に立たないばかりか、フォローのための負荷が増えるだけだ。有識者が参加できないDRは、レビューの質を低下させる。
DR における第2の問題は、通過基準が不明確であることだ。設計プロセスの節目で行うDRは次のステップに進むための関門の役割を担っているが、通過基準がな いDRはその役割を果たさない。問題解決が先送りされてしまい、結局は手戻りを生じさせることになってしまう。納期に間に合わないからと見切り発車で次の 工程に進んでいるケースも少なからず目にすることがあるが、急いでいるからこそおろそかにしてはならないといった認識がなければ、歯止めにはならない。

 

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2011年2月号 p72~75「体質改善3次元設計」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。