3次元図形処理技術解説 第15回 変換エラーを起こしやすい形状例

技術ディビジョン・プロフェッショナルコンサルタント 宮木 邦宏

 

今回は、CADデータ変換時に、変換エラーを起こしやすい形状について説明していきます。
これまで本解説では、CADごとの形状理論の違いや、モデリングトレランスの違いで、データが再現できないことを説明してきました。しかし、変換エラーや変換後に発生する形状の不具合は、それ以外の要因でも起こり得ます。
それはおおよその場合、「無理なモデリング」に起因していると言えます。

 

「無理なモデリング」に属するものとしては、
●縮退(三角パッチ)面
●自己交差面
●適切でない構成曲線から生成された面
などが挙げられます。それぞれについて、説明をしていきます。

 

■縮退面
通常曲面は、4辺から生成されますが、そのうちの1辺が極端に短いか、点であるものを「縮退面」と言い、「3角パッチ」とも呼ばれます。下図の曲面は、1/8球面をスイープ曲面として生成したものです。半径5mm,角度90度の円弧を作り、直交方向にもうひとつ同じ半径で角度90度の円弧を作って、それに沿ってスゥィープさせています。CADよっては、このような面は球体の一部として精度よく定義することができ、曲率も一定となりますが、すべての曲面を NURBSで定義するようなCADでは、上記のような生成方法が採られる可能性があります。
本来期待しているのは球面で、すべての部分で曲率は5mmでなければなりません。しかし、下図の曲率分布に示されているように、頂点(縮退点)近傍では16mm前後の曲率になっています。
縮退面は、縮退点のあたりで、期待した結果が得られない可能性があります。例では曲率が大きくなっていますが、稜線の素性によっては極端に曲率が小さくなったり、歪んだりすることもあります。この結果、変換先のCADシステムで面が生成できず欠落する、トリムが解除されるなどの問題が発生する原因になり ます。

■自己交差面
自己交差面は本来、モデリングのミスと考えられます。ルール面(ふたつの構成曲線をそれぞれ0→1のパラメータで分割し、同じパラメータの点を直線的に結 んでできる面)を生成する際、曲線の始点から終点の方向を逆にしてみると、簡単に生成できます。蝶々の羽のように捻った形になり、自己交差します。シアン で面を塗りつぶしていますが、下図左の面の輪郭が崩れていることからも、交差点の近傍で何かしら問題が出やすいことが容易にわかります。回転面形状におい ては、回転させる形状が少しでも回転軸と交差していれば、自己交差が起こります(下図右)。トリムがしっかり行われていなかったり、CADの交点計算が甘 かったりすると、このような自己交差面を生じる可能性が高まるわけです。

最近はソリッドモデラが主流になり、このような自己交差面が内在するケースは少なくはなっていますが、モデリングトレランスの範囲で、自己交差を起こすよ うな曲線が変換されてくることは十分に考えられます。これも、面の欠落、トリムの解除の原因になりますし、ソリッドモデルとして閉じた形状を作成できないといった結果につながります。

 

■適切でない構成曲線から生成された面
ひとことで「適切でない」といっても非常にわかりにくいと思いますので、何はともあれ、下図を確認してください。この面にはふたつの部分で無理があります。
オレンジ色の曲線に着目します。一方は、曲面を生成するための曲線が、隣り合う構成線と接線の関係にあります。また、もう一方では隣り合う構成線と非常に近接しており、かなり細い部分が生じています。
本来、曲面は隣り合う構成線とはある角度を持って交差していることが望ましく、また狭く細い部分を持たないようにするべきで、そうしないと、接点近傍や狭 小部で面のゆがみが生じやすくなります。このゆがみによって自己交差を起こすことがあり、面の欠落やトリム解除の原因になります。

下図は疎密の差が大きい曲線における、形状のゆがみの例です。左にあるような直線上の点を与え、1本のスプラインを作成したのですが、コーナーRのように なっている部分には制御点を与えていません。これにより制御点の疎密の差が大きくなっていますが、この結果生成されたスプラインには、微妙なゆがみが生じ ます。この曲線を使って作成した曲面は当然ゆがみます。

元のCADではスムースな曲線が、変換先のCADでひずむといったこともあります。NURBSの表現次数上限を超えるスプラインの近似を行う場合や、「重み付け」(本講座で解説済)データが、変換先で再現できないといったときに生じる可能性があるわけですが、曲面表現次数の制限など、モデル構築ルールを しっかり決めることで、問題発生を防ぐことが可能です。
このほかにもさまざまな適切でない形状がありますが、要は「素直な面か否か」が問題であり、無理矢理作成した面には、何らかの問題が出る可能性があると認識しておくのが無難です。

 

■ソリッドモデラでは、知らず知らずのうちに問題を作り込むこともある
サーフェスモデラ主体の時代には、上記に説明した問題はほぼ100%モデル作成ミスや人為的な問題でした。しかし、ソリッドモデラが主流になった今日、モデル作成者がいくら注意していても、知らず知らずのうちにこれらの問題を作り込んでしまうことが増えました。
例えば縮退面の例として挙げた1/8球面のような形状は、ソリッドブロックのコーナーに同一Rのフィレットを付加していくと、形状の頂点部に必ずと言って いいほど現れます。極端に小さかったり細かったりする面も、集合演算の繰返しの結果、存在しやすくなります。近年CADデータ品質(PDQ)向上が求められてきた背景には、こういった無意識のうちに作り込まれるモデルの欠陥の問題があります。

逆に言えば、こういったモデル変換上の問題を発生させる形状の作り方には、必ず特性がありますので、それらを禁則ルールとしてまとめ上げておけば、品質の高いモデリングが可能となるわけです。

 

PDQの観点から見た形状的問題の事例は、日本自動車工業会と日本自動車部品工業会がまとめた「JAMA/JAPIA PDQガイドライン」に詳しく述べ られています。このガイドラインには、さまざまなデータ変換不具合に結びつく形状例が解説されており、どのような作業を行うときにそれらが影響するかも示 されていますので、参考にすると良いでしょう。

 

CADデータ品質を向上して、データ変換における形状の崩れを最小に抑えること、および形状欠落等の修正にかかる工数を最小限に抑えることは、3次元CADデータ活用に必要不可欠なものであるという認識を、しっかりしていただきたいと思います。

 

(第15回おわり)

 

パブリシティ・イベント