3次元図形処理技術解説 第12回 曲線/曲面理論間のデータ互換性

技術ディビジョン・プロフェッショナルコンサルタント 宮木 邦宏

 

これまでの本講座で、代表的な曲線理論である、Ferguson/Coons、Bezier、B-SplineおよびNURBS曲線について解説してきました。今回はこれらを互換性の観点からまとめたいと思います。

 

曲線の表現の豊かさは、Ferguson/Coons<Bezier<B-Spline<NURBSという関係にあります。
また、互換性も同様に Ferguson/Coons→Bezier→B-Spline→NURBSの方向では等価変換ができます。しかし、特殊な条件の場合を除き、逆方向の等価変換は行えません。

このことは、例えばBezierからFerguson/Coonsへのデータ変換を行う場合には、近似が必要であることを意味します。つまりは変換元のCADデータが近似によって等価性を失い、形状が変わってしまう可能性があるということです。
これがCADデータの相互流通の妨げになることは、言うまでもありません。各CADのデータ変換プログラムでは、できるだけ元の形状に忠実に近似するよう にはしています。しかし、完全ではありません。変換前後で許容値以上に形状がずれたり、面の欠落が起きたりすることもあります。このため、各CAD間の データ変換の相性、特に採用している曲線/曲面の種類を、予め確認しておくことが重要になるのです。

 

■同一曲線理論間でも、等価変換にならない場合がある
では、同一理論の曲線/曲面理論を用いていれば互換性は保てるでしょうか?
実は、これにも注意が必要です。Ferguson/Coonsの場合は、曲線の次数が3次固定ですから、その表現の性格上、等価変換ができます。しかし、それ以外では、CADごとの次数の制限によっては、等価性は失われます。
Bezier曲線は本来可変次数で、理論上は制御点数の制限がありません。しかし、実際には、その取り扱いを容易にするために、上限となる次数を決めてい ます。例えばAutoCADは25次が上限となっています。これを超える場合には、複数のBezierセグメントで表現することになります。50次の Bezier曲線を25次のAutoCADに変換すれば、元は1本の曲線だったものが、2本のセグメント連鎖で近似表現されることになります。この結果、 微妙に形状は異なったものになるわけです。 B-Spline(NURBSも同様)は第8回に説明した通り、Bezier曲線の集合体として表現されます。元となるBezier曲線は本来可変次数で すが、B-Spline曲線内のそれは次数が固定です。また、CADごとにBezierセグメントの次数上限があります。I-deasは7次、NXは23 次という具合です。
高次のB-Spline曲線を、低次のB-Spline曲線しかサポートしていないCADに渡す場合には近似が必要となり、微妙に形状が変化します。
この問題を回避するために、利用可能なBezierないしNURBS曲線の最大次数を、全てのデータ交換対象CADのうち、最も低いサポート次数のものに合わせるようCAD運用ルールを定めるのが一般的です。

 

■呼称は同じ曲線理論でも、細部が異なることもある
さらに曲線や曲面の呼称は同じであっても、細部まで同じとは限りません。B-Spline曲線では、非一様、一様、開一様のように、ノットベクトルの与え 方によって形状は異なります(第10回参照)。また、CADはそれぞれ特徴を出すために、曲面の表現のしかたを工夫している場合があります。設計から製造 までひとつのCADだけを使っていれば問題がないのですが、異機種CAD間で連携を図る場合には、これが元で形状が変わってしまう可能性も否定できませ ん。たとえばバーンスタイン基底関数に手を入れ、独自の改良をしているといったことだけで、微妙に曲線のうねり方が変わってきてしまうのです。

 

■「NUPBS」という、NURBSの特殊形を採用しているCADもある
現在は3DCADの多くがNURBSを採用しています。しかし、その中で自動車メーカにユーザの多いCATIAは、NURBSの特殊形式である NUPBS(Non Uniform Polynomial B-Spline)を採用しています。NURBSは重みベクトルを定義できるのが特徴ですが、私が調べたところでは、CATIAのNUPBSは重みベクト ルが一定(すべて1)で、ユーザが変更することができないようです。とすると、NUPBS→NURBSは大きな問題がないものの、その逆ではデータ変換時 に近似が必要になり、等価性が失われる可能性が大です。
形状公差が大きければ、モデル形状を近似しても大きな問題はありません。しかし精度を要求する形状では、近似そのものを嫌う傾向にあります。CATIAを 採用している企業が精密ものになるほど少なくなるのは、このあたりのデータ変換時の互換性も関係しているのかもしれません。

 

以上のように、良好なCADデータ交換を実現するには、それぞれのCADが採用している曲線/曲面理論の詳細を正しく理解しておく必要があります。

 

(第12回おわり)

 

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