日経ものづくり/体質改善3D設計 第7回 性能と品質の作り込み ~設計指針をCAD付属のCAEで導出~

技術ディビジョン・コンサルタント 中島 康

 

3次元設計における効果は、主に2つある。そのうちの1つは、前回(2010年9月号)の「生産工程を含めた効果の刈り取り」で解説した。後工程で3次元モデルを利用することによる効果といえる。
もう1つの効果が、製品そのものの性能と品質の作り込みだ。今回は、これを早期に実現するための開発スタイルについて説明する。そのキーになるのが、CADのオプションとして機能するCAEである。

 

 

■CAEは正しく使われているか?

 

CADやCAEベンダーの解説では、CAEは開発プロセスの中で「試作」に置き換わるものとして位置付けられることが多い。これを結果確認型解析という。
そして、設計者がこれを簡単な操作で行えるよう、「設計者向けCAE」と銘打ったCAEツールをオプションとして組み込み、形状データをそのまま解析用の モデルとして利用できるCADが提供されている。しかし、これまで多くの設計/開発現場と解析事例を見てきたが、この種のCADが効率よく稼働していると ころは意外と少ない、というのが正直な感想である。あまり使われていないか、間違った使われ方をされている例が多い。
この「設計者向けCAE」については、CAEのユーザーサポート経験から、その使用に際して2つの点で注意が必要であると考える。

解析機能の制限
設計者向け仕様とするためにオペレーションの簡易化を図り、元のCAEツールと比べて機能が制限されているケースが多い。このため、試作の代用になるような精度を追求する解析には向かないことがある。

解析時間の増大
CADデータをそのまま流用して解析を行った場合、設計現場の実情に合わないぐらい解析の実行に時間がかかることがある。
これらのツールは導入が容易であるとはいっても、使う上では設計現場のニーズとツールの特性をよく把握することが重要だ。この点はベンダーも実情を理解しきれていないと思われる。
CAEと設計現場の両方に精通した人の存在が、導入と活用のカギとなる。

 

■「結果確認」から「解析主導」へ

 

同じCAEであっても、解析専任者と設計者では役割分担が必要だ。CAEの専門家である解析専任者は、CAEによって試作の代用となるくらい精度の高い解 析結果を出すことが求められる。 これに対して設計者は、設計業務の中でより良い意思決定を、CAEによって導き出すことが求められる。このように設計を進める場合、解析実施のタイミング は設計が固まってからではなく、設計前や設計中に、必要に応じて実施することになる。このような設計の進め方を解析主導型設計という。
解析主導型設計によってCAEを使う場合は、結果確認型解析手法よりも使用頻度が上がり、使用時期も前倒しとなる。CAEの使い方(操作方法ではない)に対して、以前からいわれている概念を変えることが必要だ。
下図では解析主導型設計の例として、締結部のボルトサイズとボルト本数の組み合わせを挙げてみた。ボルト設計でイメージがつかみにくければ、リブの高さと厚さなどに置き換えて考えてもよい。通常、設計はこのような多次元の変数から成る設計空間の中で行う。

 

 

設計のスタート時には、CADデータを流用する場合、自然と既存モデルの仕様を適用することになる。流用品の使用条件が従来と同様ならばそのまま流用して も問題ないが、使用条件が異なる場合は、CAEによって確認する必要がある。解析で問題が確認された場合、設計者は現状設計が設計NGゾーンにあることを 認識する。次に設計者は、流用モデルに対して大まかな変更(使用可能な最大サイズへのボルトの変更や、使用可能な最大数までのボルトの追加など)を行い、 解析を実施して変更による効果を確認する。最も効果のある設計方針が見つかれば、設計に関する探索エリアの絞り込みを行う。
設計方式が定まった後は、それに従った詳細なモデル変更をCAD上で行い、CAEでその効果を確認する。解析結果を精査することで、仕様を満足(設計OK ゾーンに移動)させるための方策も確認できる。このとき、コスト増を気にしすぎて設計変更の程度を小さく抑えがちにする傾向がよく見られるが、そうならな いように注意する方がよい。
設計仕様を設計OKゾーンに移行できたら、次はコストダウンのための最適化を行う〔図2(b)〕。CAE解析結果の特徴の1つは、「パーツなどを加えた場 合の性能変化」よりも「パーツなどを削除した場合の性能変化」の方が予測しやすいことだ。これを利用すると、より少ない回数の試行錯誤で最適設計結果を得 られる。つまり、設計OKゾーン内での最適化は比較的容易な「削除型」になる。設計NGゾーンでコストを気にしない、思い切った設計変更の検討を勧めるの はそのためである。

 

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2010年10月号 p100~104「体質改善3次元設計」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。

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