日経ものづくり/体質改善3D設計 第5回 活用の拡大 ~ボス・リブまで標準モジュール化~

技術ディビジョン・コンサルタント 元田 豊

 

前回(2010年7月号)まで、3次元設計の基盤づくりと3次元設計手法の定着について解説してきた。これらが確立して3次元設計が軌道に乗ってくると、次はいよいよ3次元設計の効率向上と、活用拡大の準備の段階である。
この段階では、だいぶ効果を実感できるようになる一方で、「無駄」と思えるような作業が目に付き始める。例えば、付帯的業務である帳票作成作業。特に部品一覧のような帳票は、アセンブリモデルを基に自動作成する方が合理的に思える。
モデル作成においても、同じ手順の繰り返しになるものが見えてきて、できるだけ自動化することで省力化を図れる。そのもう一歩踏み込んだ取り組みとして我々が推奨しているのが、「製品特有の典型形状や、ボス/リブのような構造部位の標準化・モジュール化」の実施である。
「製品の標準化・モジュール化」というと、「部品ライブラリーの整備」ないしは「部品の標準化・モジュール化」のように、部品を単位とした活動を意味する 場合が多いのではないだろうか。それらの活動も効果的だが、今回着目するのはあくまで部品の中に存在する形状要素(部分形状)であり、ライブラリーとして 整備するのも形状モジュールである。

 

■1段細かいレベルで標準化

 

一般に多くの3次元CADでは、繰り返し使えるような部分形状を「ユーザー定義フィーチャ」などと呼んでおり、ライブラリーに登録/再利用できる機能を提 供している。ところが我々が知る限り、その種のライブラリーを有効に使っている例は少ないようだ。特に一品一様の製品を設計しているケースにおいては、ほ とんど整備されていないのが実情である。恐らくは、そのような機能を使っても使わなくてもモデリング時間にはそれほど差が出ない、あるいは一品一様なので 使う機会がまれである、との判断があると考えられる。
下図に示すピラミッドは、製品に関する標準化の着眼点を表したものである。製品やアセンブリ(組み図)の標準化がピラミッドの頂上側にあり、その下に部品の標準化の取り組みがある。そして、最底辺に形状のモジュール化が位置する。

 

 

部品の標準化は、ともすると最底辺に位置するように見えるかもしれない。ビスやナットといった機械要素だけを対象とするなら単純な取り組みともいえよう が、しかし多くの部品における標準化は製品特性やそのバリエーション展開、ひいてはモジュラーデザイン(MD)に直結したものであり、実際には相当にレベ ルの高い活動といえる。
一方、形状に着目したモジュール化は、モジュラー型製品であっても一品一様の個別設計の製品であっても有効であり、そのすそ野は広い。それなのに、なぜかこの取り組みの重要性は見過ごされている。実にもったいないと言うほかはない。

 

■いかに考える作業だけにするか

 

形状モジュールの整備は、QCD(品質、コスト、納期)の向上/短縮という点で、どのような製品を開発している場合でもかなり有効なものになる。分かりやすい例として、自動車レース「F1」のレーサー(パイロット)で説明してみよう。
レーサーは速さを極限まで追求し、サーキットを常人では考えられないスピードで走る。そしてレーサーは、世界のあらゆるサーキットにおいて、常にトップスピードで駆け抜けることができる。
これには理由がある。初めてのサーキットであっても一つひとつのコーナーに分解して見れば、既に走ったことがあるどこかのコーナーと形状が類似している場 合がほとんどだからだ。中には、要素に分解しきれず、サーキットごとに攻略法を考えなければならない難所もあろうが、そういう場所ができるだけ少なくなる ように分析できる頭の良さも、レーサーの実力といえよう。 モデル内のフィーチャに着目するのも、このF1レーサーの考え方に似ている。設計する製品モデルを分割した単位で見ることにより、全体としては違ったもの であっても部分は同じものと見なして、素早くかつ品質が良いものを作ることが可能になる。
あるメーカーでは、改革活動の一環として設計を「プロセス」と「形状」の観点から見直し、難所に当たる「思考のいる作業」と、当たり前に実行できる「思考 のいらない作業」に切り分けた。そして「思考のいらない作業」に対しては、その形状をモジュール化したもので対応できるように、設計を大幅に見直す活動を 実施した。その結果、思考のいらない作業の工数を大幅に削減する効果を出している。
このメーカーでの取り組みを含め、形状モジュール化の活動においては、幾つかの注意点が存在する。ここでは、必ず押さえるべき3つのポイントに絞って説明する。
・モジュール化すべき形状要素の候補の探し方のポイント
・類似の形状要素をまとめて形状モジュールを決める際の整理の仕方のポイント
・整理した形状モジュールを3次元CADで使うときのポイント
である。

 

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2010年8月号 p74~78「体質改善3次元設計」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。

パブリシティ・イベント