日経ものづくり/体質改善3D設計 第10回 標準化とモジュール化3~サブアセンブリの定義が重要~

技術ディビジョン・コンサルタント 大泉 圭一

 

前々回(2010年11月号)、前回(同年12月号)に引き続き、設計の標準化とモジュール化の取り組みを紹介する。前回は、機能設計における標準 化とモジュール化の実行手順(下図の?~?)について説明したが、今回は前回触れられなかった形状設計における標準化とモジュール化の実行手順(?~?) を取り上げる。以下に、形状設計のモジュール化から説明していこう。

 

■形状設計のモジュール化 製品構成要素間の相関関係の可視化とクラスタリング

 

形状設計のモジュール化を進めるに当たっては、まず、相関関係を可視化して分析する。ここでいう相関関係とは、設計の過程で状況に応じて擦り合わせが必要 となるような関係のことだ。相関関係を分析する狙いは、その結果に基づいて製品構成を検討し直し(製品構成要素をクラスタリングし)、擦り合わせの手間を 最小限に抑えることである。
補足すると、ここで対象とする相関関係には2種類ある。1つは、製品構成要素間で何がしかの関係を持ち互いに影響を及ぼし合う状態にあるようなもの。例えば、互いに組み付けたり干渉する可能性があったりするなど、形状設計で注意を払うべき物理的な関係だ。
もう1つが、前回、機能設計のモジュール化で確認した因果関係に相当するもの。例えば、仕様を変えるとき、機能にも性能にも問題が無いかどうかを常に組で 確認しなければならない構成要素があるが、その関係がこれに当たる。このようなケースでは必ずしも物理的な相関関係を持っているとは限らないが、擦り合わ せを発生させる可能性があるため検討対象に含める(この関係は、機能設計に原因があると考えることができる)。

 

■相関関係をくくりの中に

 

こうした相関関係の可視化と分析に有効なのが、クラスタリングDSM(Design Structure Matrix)である。クラスタリングDSMでは、製品の構成要素を行と列に並べ、2つの構成要素間に相関関係がある場合はその交点にマークを付ける (マークの色分けについては後述)。

 

上図では、2つのクラスタリングDSMを並べているが、実は(a) が製品構成のクラスタリングを実施する前、(b) がその実施後のものである。 (b)では、特定の構成要素のくくりの中に、できるだけ相関関係が集中するように構成要素の並び順を見直している。セルのケイ線を消して周囲を枠で囲った 部分がモジュール(インタフェース・ルールなどでくくりを定義したもの)であり、空白のセルで四方を囲まれた複数のモジュールから成る部分が上位の構成 (サブアセンブリ)である。
同一のくくりの中の相関関係はくくりという限定された範囲の中で対処できるが、複数のくくりの間にまたがって分布する相関関係では、相対的に擦り合わせの手間が増えるのは容易に推測できる。
例えば、くくりごとに別の場所で設計していたり異なるチームで設計していたりする場合、くくりをまたぐような相関関係があると、異なる場所やチームの間で のコミュニケーション(擦り合わせ)が必要になる。その作業にかかる負荷は、同じ場所やチームにおけるコミュニケーション(擦り合わせ)よりもはるかに大 きい。従って、くくりをまたぐ相関関係は管理して対処するのが望ましい。製品構成の検討では、可能な限り相関関係を特定のくくりの中に入れ込むように製品 構成を見直す(クラスタリングする)。
もっとも、現実問題としてそれが難しい場合も少なくない。実際、図2(b) でも、相関関係が特定のサブアセンブリに分布(同図中央)していたり、製品全体に分布(同図右下の薄く色を付けた部分)していたりしている。これらの構成 要素については、設計の進捗に合わせて常に製品全体、もしくは相関関係が分布しているサブアセンブリ全体に対して気を配りながら整合性を取りまとめていく ことが不可欠であり、経験や発言力を最も持つ設計者が担当すべきである。
実際に作業してみると分かるが、既存の製品について分析を行う場合、モジュールを変更することは多くない。サブアセンブリをどのように定義するかで結果に差が出てくる。
このように、クラスタリング作業とは、構成要素を相関関係の分布によって下記のように分類するものとも表現できる。
•特定のモジュールにのみ分布する
•複数のモジュール(サブアセンブリ)に分布する
•製品全体に分布する

 

以下に、クラスタリング作業の基本手順を紹介しよう。まず、構成要素を適切な粒度でリストアップし、それらをクラスタリングDSMの一番左の列と一番上の 行に並べる。次に、それらの構成要素間の相関関係にマークを入れる。このとき、マークを相関関係の種類で変えると後の作業が進めやすくなる。
例えば、「組み付ける」というような相関関係は隣接することを前提としており、くくりを読み解く目印にもなる。従って、マークは目立つものにしておくとよ い。ギア列のような、動力が伝達される相関関係については性能や機能の検討が必要になり、かつ隣接する可能性も高いので、これも目立つマークにする。その ほか、異なる色でマークの違いを表現するなどして、相関関係の分布を捉えやすくしておくことが望ましい。
加えて、相関関係の強さ、すなわち擦り合わせが発生する頻度やその負荷の大きさが分かるように、マークの種別(重み付け)を設定しておくことも重要だ。筆 者らは3段階に分けている。例えば、因果関係に基づく相関関係の場合、そこにマークを付けるべきかどうかで迷うことがしばしばある。
そのとき、重み付けの異なるマークが用意してあれば、迷わずにマークを付けられるようになる。管理すべきインタフェースを抽出するとき(後述)に一番弱い相関関係は無視するなど、こうした重み付けは後々の判断や分析でも役立つ。
相関関係のマークを付けたら、一つひとつの構成要素が持っている相関関係が広く分布しているのか特定の範囲で分布しているのかに注目し、製品全体に分布し ているものを一番下に移動させる。特定の範囲に限定的に分布しているものは一番上に移動させる。後者は特定のモジュールに所属すると予想される構成要素 だ。結果として、ある程度広く分布している構成要素が中間に残っているはずなので、それらがどのようなサブアセンブリを示唆しているかを読み解く。
ここまでの作業では、その構成要素が具体的に何なのかはあえて考えない。相関関係にのみ着目してクラスタリングを行うのがよい。

 

(続きは、下記よりPDFをダウンロードしてご覧ください)

 

出典:PDFを含む掲載記事は、日経BP社『日経ものづくり』 2011年1月号 p90~95「体質改善3次元設計」より、日経BP社の了承の下、掲載しております。

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